週末は雑木林に囲まれて

八ケ岳に魅せられて、週末は八ヶ岳南麓で暮らしています。東京と行ったり来たりの暮らしの中で感じたことや考えたことを綴ります。

カラマツで作る新国立競技場

東京の家は

新国立競技場の近くにあります。

しょっちゅうその前の通りを通るのですが、

通るたびにその姿は進化しています。

 

今日の新国立競技場の現場です。

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実物を前にすると

その巨大さに目を奪われます。

 

まるで「進撃の巨人」に出てくる、

街を守る要塞のようです。

いや、逆ですね。

この中で戦う巨人たちを

逃げないように閉じ込める要塞・・・。

 

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

イタリアのコロッセオを何倍も巨大にした感じです。

 

いま建設中のこの建物は

来年の11月に完成予定です。

 

二転三転した挙句、

建築が大成建設・梓設計・隈研吾

のチームになったことは

記憶に新しいと思います。

 

青天の霹靂ともいえるこの事態に、

隈研吾さんは、

”火中の栗を拾う”という例え方で

この大事業に臨む思いを語っていますが、

 

www.nippon.com

 

一番印象的なのは、

屋根を支える構造にカラマツを

使おうとしていることです。

 

カラマツは曲がったりうねったりするので、

かつては建材としては

まったく見向きされませんでしたが、

国産の針葉樹の中では

唯一の落葉針葉樹。

それゆえに広葉樹に似た性質を持っていて

特に50年~60年級の立派なカラマツが

見直されはじめ、

今では建材として注目を

浴びるようになっています。

 

カラマツはそもそも

長野県が主要産地で、

長野県では森林面積の

55%をも占めていると言われています。

 

kenzai-digest.com

 

僕は隈研吾さんの

この難しい国産材を使おうとしている姿勢に

強く感銘を受けました。

 

隈研吾さんは建築家ですが、

「建築を消したい」とずっと思っている方です。

そのためには

透明な建築とか埋める建築とかにも

挑戦しているのですが、

建築が消えたらそれは建築なのか、

という究極の問いに、

境界を消すことだ、と唱えています。

 

話はそれますが、

「無印良品」というのがあります。

それはセゾングループの堤清二代表が

当時のブランド品=高価格という時代に

疑問を投げかけた

アンチブランド・プロジェクトで、

主張を消す、

という視点で似ているような気がします。

 

隈さんの考える新国立競技場のコンセプトは、

「杜のスタジアム」です。

だから安くたくさん仕入れられる

国産の木材を使おうとしているのですが、

神宮外苑の森の一部へと

溶け込んでいくことを

その究極のゴールに据えています。

 

無印良品は

アンチブランドを訴えつつも

今では一つのブランドになってしまっています。

(僕は好きです💦)

それと同じ結果が

待ち受けているのかもしれません。

しかし、

人々の暮らしに溶け込む、

という視点では、

この新国立競技場の

オリンピック以降の姿に興味を持っています。

 

今はこの要塞のような姿ですが、

50年、100年たった未来、

この新国立競技場にシンクロするように

街もここから変わっていくのかもしれません。

 

消える建築。

その哲学的な挑戦の結果を

僕は見れないかもしれませんが、

僕の子供たちの世代に

見せてあげたいと思います。

 

僕は2020の東京オリパラに

世間が盛り上がるほど

全く持って盛り上がっていませんが、

この新国立競技場の存在のゆくえには

期待を込めて楽しみにしています。