仕事の先輩Mさんが
神保町に事務所を構えているのですが、
そのMさんから
とにかくおいしい欧州カレーだから
一度食べに行こう、と
ずっと誘われていて行けなかったお店に、
昨日ようやく行ってきました。
そのお店は
「仙臺」(せんだい)というカレー屋さんです。
僕らが入った時間は
午後の4時半。
(そんな時間にもう夕飯かよ!)
一番空いている時間ですが、
学生さんや地元のおばさんが
出入りしていて、
中途半端な時間にも関わらず
賑わっていました。
多分常連さんなのでしょうね。
僕らは入り口付近のカウンターに座りました。
(というか、カウンターだけの店です)
メニューを見ると、
牛タンやハヤシライス、オムライス、
えびめし(チャーハン)などが揃っています。
カレー屋さんというよりも
洋食屋に近いものがあります。
そして値段を見てビックリ!
鉄板メニューの
ポークカレーやチキンカレーは
なんと、450円!
ご飯の量は300グラム!
まずはド直球でポークカレーを注文しようとしたら、
Mさんがその前に牛タンを食べましょう、と、
ビールとともに
1400円の焼き牛タンを注文。
カレーはそのシメに後回しにすることにしました。
なんでここに牛タンがあるのかというと、
マスターが仙台出身だからだそうです。
だからお店の名前も「仙臺」なのです。
出てきた牛タンがこれです。
分厚くてやわらかくも歯ごたえがあって、
まるでステーキです。
牛タンのお店はたくさんありますが、
薄くて固くて、
牛タン自体をあまりおいしいものだと
思っていなかったですが、
初めて牛タンのおいしさを知らされた思いです。
ビールがグイグイ進みます。
もう一杯頼もうとしたら、
Mさんが小声で、
前にみんなでビールばかり注文していたら
うちはカレー屋なので
カレーを注文してくれ、と言われ、
ビールは1杯にとどめて
カレーを頼みましょう、とささやきました。
それでビールをあきらめポークカレーを注文。
やってきたのがこれです。
実はご飯を200グラムに減らしてもらったのですが、
(通常は300グラム)
それでもこのボリュームです。
そしてこの濃くて辛そうで
熟成させたような黒光りする色。
これは覚悟してかからんと・・・
と思って一口口にしたら、
最初は香辛料独特の匂いが
鼻腔を刺激したものの、
喉を通ったあとは
じわ~っと甘みが広がります。
普通は逆で、
口にした瞬間はマイルドだけど、
あとから辛さが襲ってくるパターンです
あとから甘さがやってくるという
逆パターン。
いや~、このルウすごいですね!
とMさんに言ったら 、
ルウって言ってはいけないんです、
ソースって言ってください、
と言われました。
(何でか聞こうとしたのですが、
マスターが近くにいたので聞けなかった・・・)
この豊かなうまみというか甘みのもとは
なんなんだろうと考えながら食べたのですが、
多分玉ねぎなどの野菜のそれです。
スパイスの個性や辛さ以上に、
煮込んだ野菜や肉のうまみが
上回っているのです。
Mさんが分析するには、
これは海軍カレーの流れを汲んでいるとのこと。
海軍カレーとは、
明治時代に大日本帝国海軍が
洋上任務の艦内で
栄養のバランスのよい食事を、と
当時の軍医が考えた料理で、
野菜と肉と米が
バランスよく摂れる料理として
定番になったことから
有名になりました。
ゆえに、香辛料の辛さと
野菜や肉のうまみが混然一体となった
いわゆる日本人にとって
親しみやすいカレーです。
カレーを平らげる頃に
Mさんが言いました。
「実はカレーよりうまいのが、
ハヤシライスなんです」
「ええ~、カレー屋なのに?」
すると重ねて、
「そのハヤシライスよりうまいのが
えびめしなんです」
「ええ~、カレー屋なのに?!」
「そうやってみんな常連さんに
なってしまうんです」
確かに。
カレーもハヤシライスもえびめしも
一度には食べられません。
「それ以上にマスターがいいんだよ」
と、Mさん。
ぶっきらぼうに見えたマスターも
実はその逆で、
みんな常連さんなので
あうんの呼吸で動いているので
そう見えたようです。
お隣の学生さんにカレーを出すとき、
「これでいいのか?」
とマスターの声が聞こえたのですが、
それってその学生さんの
いつもの量やメニューを
知っていないと言えない発言です。
大丈夫です、と言って学生さんは笑ってましたが、
彼にとっては”おふくろの味”ならぬ
”おやじの味”、なんでしょうね。
きっと。
サービスとかおもてなしとか
日本の文化が注目されていますが、
その神髄は、
こういう関係にならないと
わからないと思います。
欧州カレーという
450円の海軍カレーに
こころ揺さぶられた昨日でした。