週末は雑木林に囲まれて

八ケ岳に魅せられて、週末は八ヶ岳南麓で暮らしています。東京と行ったり来たりの暮らしの中で感じたことや考えたことを綴ります。

池袋の楽器屋でブルースじいさんに会った。

今日池袋で打ち合わせをした帰り、

ふと楽器屋が目に留まったので

ふらり入ることに。

 

アコースティックギターを見ようと思い

アコギのフロアに上がったら、

店の真ん中に置いてある

試し弾きにお客さんが座るような

大きめのベンチシートで

じいさんが寝てました。

 

薄汚れた運動靴に

迷彩色のワークパンツと

ちょっと派手めのジャンパー。

口元には髭、ボサボサの長い髪。

顔を隠すように

ニットの帽子を深くかぶっています。

見た目は60台後半、といったところでしょうか。

ちょっとわけありのやばそうな感じです。

 

僕が入った時

ちょうどフロアの店員の若い女性が

店長らしき人にこそこそ電話をしていました。

 

「そうなんです・・・

そう、さっきの人です。

寝ちゃったんです。

・・・

はい、わかりました。

・・・

はい、そうします。」

 

あ、なんかやばい時に来ちゃったなあ・・・

 

そう思いながらもギターを見ていたら、

女性の店員がそのじいさんに声をかけました。

 

「あの~、もしよかったら

試しにどれか弾いてみますか?」

 

口ではそう言っていますが、心では

「ちょっと起きてください!

ここは公園じゃありませんので

出て行ってください」

そう言いたかったのだと思います。

 

するとじいさん目を覚まし、

「おお、そうだね、弾いてみようかな・・・」

と言い出しました。

 

店員、しまった!という感じ。

でもそう言われたらあとには引けません。

 

「初めてでしたら、これなんかいかがですか?」

なんて言って安めのギターを紹介しようとしたら、

「昔弾いたことがあってね・・・

こんなのが弾きたいなあ」

と言って立ち上がり、

ギブソンの高いギターを指さしました。

 

立った姿は腰が曲がり足腰がふらついていて

言葉もよく聞き取れない。

酔っ払っているのか

はたまたラリッちゃっているのか、

そんな感じです。

 

ギター持たせたら

壊しちゃうんじゃないの・・・?

そう不安になって見ていたのですが、

店員さん、あとに引けません。

 

わかりました、と言って

ギブソンをチューニングし、

じいさんに渡しました。

 

するとじいさん、

ポロポロと小さな音で弾き始めました。

 

最初はコードを鳴らしているだけでしたが

どうもブルースコードです。

そのうちにピックを持ち

ジャカジャカ鳴らし始めました。

 

それが、とてもうまい!

 

おおお!いいね!

なんて内心思っていたら、

やがて歌い始めました。

歌詞は何しゃべっているのはわかりませんが、

しゃがれた声でウニャウニャ言っている感じが

妙にブルースしているのです。

 

一方で僕も

見ていたうちの1本を試しに弾きたくなって

店員に声をかけました。

 

店員さん、そのギターを

いろいろ説明してくれるのですが、

その横でじいさんがどんどん増長していきます。

 

しゃべってねーで俺の歌を聞け!

と言わんばかりに。

 

しゃきっとしたその姿に

それまでのふらふら感は微塵もありません。

 

もうじいさんのワンマンライブ状態です。

 

客は店員の女の子と通りすがりの僕の二人。

僕が試し弾きなんて

そんなことできる状態じゃありません。

 

すごいですね、なんてほめようものなら

何時間で続けそうなので

「ありがとう、また来ます」

と言って店を出ました。

 

店員も申し訳なさそうに苦笑いして

見送ってくれました。

 

じいさん、確かにやばかった。

酔っているのか、

それとも精神的な何かなのか、

よくわからないけど、

昼間っからギターショップで寝ないでしょう。

 

でも、ギター弾かせたらいきなりシャキッとし、

かっこよかった。

少なくとも悪い人ではないと思う。

 

思いっきりブルースしていました。

 

さすがは池袋です。

 

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