週末は雑木林に囲まれて

八ケ岳に魅せられて、週末は八ヶ岳南麓で暮らしています。東京と行ったり来たりの暮らしの中で感じたことや考えたことを綴ります。

草間彌生さんの生きようとするチカラが溢れていた@松本市~その①~

かつて僕は、

房総の勝浦に

5年程山小屋を借りていた時があります。

 

勝浦と八ヶ岳、どっちがいいですか?

と、よく聞かれますが、

一長一短あって

どっちがいい、とは言い切れません。

というか、

どっちがいいかは

その人の価値基準によると思います。

 

ですが、誰にとっても八ヶ岳が「長」と言えることが

一つだけあります。

それは、

八ケ岳を拠点に

あっちこっち行けるということです。

 

勝浦で山小屋を借りていた時、

どこかに行こうかな・・・

と思うと、

房総半島しかありませんでした。

2年もしたら

ほとんどの場所を行きつくし、

ドライブが飽きてしまいました。

 

もちろん八ヶ岳にはない海があるのは

勝浦のいいところですが、

勝浦に行くと

どうしても行動範囲が限られてしまうのが

窮屈に感じました。

 

さて、どこに行ってもいいんだぞ、

という八ヶ岳。

 

春の日差しにちょっと遠出でもしてみようと、

今日は松本まで行ってきました。

 

狙いは国宝・松本城・・・

ではなく、

松本市美術館」です。

 

僕は草間彌生さんの作品が大好きです。

瀬戸内芸術祭や越後妻有芸術祭に

何度か足を運んだ僕ですが、

どちらの芸術祭でも

草間彌生さんの作品は圧倒でした。

 

その草間さんの生まれ育ったのが松本で、

彼女の初期のころからの作品が

常設展示されているのが

この美術館なのです。

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入り口からもう草間ワールドです。

 

無料の中庭に足を踏み入れると、

もうどこもかしこも

草間ワールドです。

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こんなポップな自販機を眺めていたら

喉が渇いてきて、

思わず「いろはす(桃味)」を買ってしまいました。

 

そのいろはすを飲みながら入館します。

入館料、なんと、410円!

うれしい安さです。

 

館内に入って用を足そうとトイレに入ったら

そこも草間ワールドでした。

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草間彌生さんの作品の展示室は

3階にあります。

撮影はNGなので写真を撮れませんでしたが、

彼女の若かりし頃から今に至るまでの苦悩と、

猛烈に襲い来る幻覚。

その幻覚をキャンバスに吐き出すことで

どん底から這い上がり、

唯一の命を保ち続けている、

彼女の圧倒的な生きようとするチカラに

何故かものすごい心を打たれました。

 

彼女はどこか死に急ごうとしるような気がします。

ですが、それを制する生命力が、

死へと向かう気持ちを

圧倒しているような気がします。

もう何十年も戦い続けている

戦士のようです。

ボロボロになっても

血まみれになっても

脈が打ち続ける限り

永遠の夏を描き続けているのではないかと

僕は感じました。

 

展示室を出て一通り3階を巡り

2階へ降りると、

そこでは地元、エクセラン高等学校の

「卒業制作展×美術家展」が

開催されていました。

 

これは、生活文化コースの生徒さんたちの

「wedding forest & summer memories」。

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受付に座る生徒さんに

「私たちの作品を見てください・・・」と、

言葉足らずな感じで恥ずかしそうに誘われて入ると、

そこには若い世代ならではの苦悩や希望が

作品になって満ち溢れていました。

 

何のことはない

彼女たちが感性の赴くままに制作した

ウェディングドレスたちですが、

結婚したがらない若者とか

覚めた若者とか

ニュースなどで言われていることは

全部嘘っぱち。

表面的なその姿の奥底に、

ふつふつと燃えて消えない

熾火のような未来への模索を感じました。

 

さらに進むと、

平面や立体を問わず

ほとばしる叫びのような

高校生の声が聞こえてきます。

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すごい・・・

ものすごいパワーを感じます。

 

アートって

プロもアマもない世界。

ほとばしる個人のエネルギーを

空間によみがえらせただけのこと。

 

気がつくと

どこか草間彌生のエネルギーと重なる

高校生の作品群を前に、

15分ぐらい立ちすくんでしまっていました。

 

脳天を雷に打たれたように

唖然として美術館をあとにした僕は、

どこに向かおうか目的すらなく、

ただぼんやりと通りに出て

歩くだけ。

 

しばらくすると

そこにはかつての城下町の風情が、

おいしそうな匂いと共に五感に飛び込んできて、

やっと我に返りました。

 

続く・・・。