週末は雑木林に囲まれて

八ケ岳に魅せられて、週末は八ヶ岳南麓で暮らしています。東京と行ったり来たりの暮らしの中で感じたことや考えたことを綴ります。

放浪博物館でしばし昭和時代に放浪した@「放浪博物館~山下清の世界~」(茅野)

美術というのには

時折思い出したように触れたくなる時があり、

昨日八ヶ岳に入るついでに足を伸ばし、

茅野にある「放浪美術館」というところに

行って来ました。

houro.net

 

なんじゃその名前は~!?

 

とお思いでしょうが、

多分多くの人が”裸の大将”という映画やドラマでご存知の

山下清の作品を常設展示している美術館です。

 

国道20号のバイパスから

ちょっと入ったところにあるこの美術館は、

一般の古民家なのか蔵なのかを改装した

ただの民芸雑貨屋のような佇まいで、

入るとギシギシと音を立てる展示室(というか部屋)は、

ノスタルジー丸出しですが、

展示されている山下清の作品は

展示総数原画が140点ほどと

驚くほど充実しています。

また、彼に関する資料や記事などもたくさんあって、

ちょっとそこらのすました美術館とは

一線を画すほど密度が濃い。

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とにかく、清愛がすごいのです!!

 

 東京浅草で生まれ育った清の美術館が

なぜここ諏訪湖が広がる茅野にあるのかというと、

彼は全国を放浪した中でも

この地が大好きだったようで、

諏訪湖の花火大会を始め

たくさんの作品のモチーフが

ここにあるからです。

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 (これは諏訪湖の花火大会を描いたと言われているようです)

 

彼は昭和15年、18歳の時に養護施設を抜け出し、

16年に渡って放浪・帰園を繰り返しました。

リュックサックに必要最低限の生活用具を詰め、

線路を歩いて駅に寝泊まりしたようです。

夏はまさに素っ裸で歩いていたところを

写真にもスクープされ、

その新聞記事なども展示されていました。

 

物乞いをしながら放浪している姿を見て、

この辺の人たちは家に泊めたり、

おにぎりを差し入れしたり、

大変優しく接してくれたようです。

そのたびに、そのお礼に、

彼はいろいろな作品を描いてプレゼントしました。

 

この美術館を設立するにあたり、

オーナーはこの地の一軒一軒を訪ねて

彼の残した作品を集めて行ったといいます。

快く差し出してくれる人もあれば、

大切な記念なので渡せない、という人もいる。

また、いらないので寄付したいという人もいれば

いらないので捨ててしまった、という人もいたそうです。

そうやって汗をかいて集めた作品や資料が

この美術館を密度の濃いものにしているのかもしれません。

 

山下清と言えば、「裸の大将」という人情ドラマで

知っている人が多いと思います。

かくいう僕もその一人。

芦谷雁之助演じるランニングと短パン姿の清に

何度も胸が熱くなりました。

彼が知的障害と吃音だったことも有名ですが、

世俗に毒されないあまりにピュアな視線や考え方が、

多くの人の心を捉えました。

 

彼の作品は何と言っても

ちぎり紙細工の「貼り絵」が有名です。

ちぎった紙には当時あまり価値のない

お札などもふんだんに使われました。

また純粋であるがゆえに

女性器なども書かれている作品もあったり

混浴の露天風呂で

大便や小便をする現実を描いたりした作品も

あったようですが、

それはまずいと

出版社から訂正を求められたようです。

貼り絵なので、その部分だけ簡単に隠せたと言います。

 

彼はまた放浪記も残しています。

日本ぶらりぶらり (ちくま文庫) | 山下 清 |本 | 通販 | Amazon

でも彼の文章はというと

「、」は「。」がなく、

永遠に「・・・ので」で続いていく文体だったようで、

編集者がそれでは読めないということで、

「、」や「。」で文章を区切って作って出来たのが

この本だったようです。

ですのでこの本を見た清は、

半分は僕の書いた文章じゃない・・・

とつぶやいたそうです。

 

晩年は有名になり

海外に行ってヨーロッパの風景なども

作品にしていますが、

昭和49年の7月、

「今年の花火はどこにいこうかな」

と弟に行ったら、

「やっぱり諏訪湖の花火がいい」

といわれ、

「そうだね、そうしよう」

と答えたその夜、

脳出血で倒れました。

そうして花火大会の約1か月前の

7月12日に亡くなりました。

享年49歳。

 

僕がそもそも放浪とかに憧れるタイプでもあるし、

彼の子供のように純粋な視点や気持ちに

共感したせいかもしれませんが、

心にこみあげる不思議な思いを抑えながら、

館内を2周もしてしまいました。

 

ひとり放浪か・・・。

なんだか憧れます。

プチ放浪もいいな。

でも僕の場合は放浪じゃなく徘徊になってしまって

北杜市の有線放送で捜索アナウンスされるかもなあ。

そもそもこうしてひとり山小屋にきてしまうのも、

放浪のひとつなのかもしれないなあ。

 

今どきにないとても密度の濃い美術館に出会いました。

 

追伸:

ここは懐かしい昭和時代の民芸品や骨董品、食器や雑貨、

例えばそろばんとかダイヤル式黒電話とか・・・、

古いお札や記念切手、昔の雑誌や本などが

山のように売られており、

マニアの方は是非!

1時間でも2時間でも飽きませんよ。

 

創業者支援総合サービス『NINJA WORK』