週末は雑木林に囲まれて

八ケ岳に魅せられて、週末は八ヶ岳南麓で暮らしています。東京と行ったり来たりの暮らしの中で感じたことや考えたことを綴ります。

御殿様に思いを馳せて湯舟を出たり入ったり@「湯々庵 枇杷の湯」(松本市)

仕事も庭のことも忘れ

たまにはドライブでもしてくるか・・・

と思い立ち、

土曜日は松本まで足を伸ばしました。

 

松本には1年ほど前にも行ったのですが

その時の目的は「草間彌生美術館」でした。

今回はというと、

松本駅から20分ほどのところにある

浅間温泉の「湯々庵 枇杷の湯」です。

 

ここは江戸時代に

松本城主が足繁く通ったということから

「お殿様の湯」とも呼ばれ、

写真で見る限りまさに信州の奥座敷。

実際は写真写りの半分ぐらいだろう・・・

とたかをくくって行ったのですが、

どうしてどうして。

 

浅間温泉街は

まさに奥座敷にふさわしく、

クルマ1台しか通れないような坂道が囲む

小さな静かな街で、

よく温泉街にある色町的な雰囲気はありません。

上品な昔ながらの風情が残っている街です。

「枇杷の湯」は街の坂道を登りつめた場所に

ひっそりと佇んでいました。

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入り口を入ると、

え、ここ、日帰り温泉施設?!

と思うような広い玄関。

いい意味で裏切られます。

それもそのはず、

ここは最近まで旅館もやっていたのでした。

 

入浴料は¥800-(税込)です。

それを払って湯舟に向かい

早速露天風呂に向かうと、

きれいに植栽された庭木からの木漏れ日が

簾でさらに遮られ、

さらさらと涼しい風に乗って

体を吹き抜けます。

しばらく湯舟に浸かって

湯舟の周りにある縁台のような長椅子に寝そべると、

その風は

体に着いたお湯の気化熱を奪うばかりか

頭の中を巡っていた

濁った考えまで気化してくれます。

 

お湯の温度はというと

熱くもなく温くもなく

ベスト!言っていいでしょう。

そしてそのお湯はというと

弱アルカリの非常に透明なきれいなお湯です。

コロナでお客さんが

あまりいないせいもあるのでしょうが、

温かい清流に身をゆだねているような感じでした。

 

湯舟から出たり入ったりを何度か繰り返し

1時間弱ほどしてお湯から出て、

座敷で一休み。

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扇風機で噴き出す汗を飛ばしながら

外を眺めます。

こうして御殿様も

春夏秋冬ここでしばし体も頭も休めたのだなあ・・・

と思うと、

松本城主はこっそり贅沢な暮らしを堪能していたのではと

うらやましくなりました。

 

館内には往時の史蹟も展示されていたり

ちょっとしたカフェやお土産屋さんもあったり、

でもそのすべてにとってつけたような

ニセモノ感はなく

時の流れをしっかりと感じます。

 

受付にいた初老の女性の方に聞いてみました。

「この建物は建ってどのくらい経つんですか?」

すると

「およそ90年ぐらいでしょうかね・・・」

という答えが。

昭和の初期、でしょうか。

思っていたほど古くはないけれど

御殿様のリゾートを丁寧に温泉宿として

再現したのでしょうね。

「文化財などではないのですか?」

と聞いたら、ちょと間をおいて、

「文化財になると自分たちのものでは

なくなってしまいますから・・・」

と答えが返ってきました。

 

多分この施設のオーナーなんだと思います。

御殿様の湯を守るために旅館にし、

理由はわかりませんが宿泊施設ではなく

日帰り温泉施設になったものの、

奥座敷にふさわしい上品なこの空気を残そうと

敢えて自分たちで経営しているのでしょう。

これだけの敷地の建物や庭を

これだけきれいに管理するのは

並大抵じゃないと思います。

 

だからこそここには

江戸時代からの時間が流れている。

遡ると自分たちの祖先は

戦乱の世の中を

しばしこうした場所に身をゆだねて

耐え抜いてきたのか、と。

 

江戸時代の御殿様に思いを馳せて

コリをほぐし

お肌はツルツル、

頭も体もスッキリ透明になれる温泉は

温泉国日本と言えども

そうないのではないでしょうか。 

いや~いい湯でした!