梅雨の晴れ間となった昨日
久しぶりに建築採集をしようと
茨城県土浦市に行って来ました。
建築採集とは建築系の業界用語に近いかもしれませんが
昆虫採集の建物版です。
目的やテーマに合った建築物を探して
写真に撮ったりスケッチしに行ったりすることです。
往々にしてそのテーマや目的は
例えば”江戸時代の豪農の家"だったり
"明治大正時代の西洋建築”だったり
学術的視点で設定されることが多いのですが、
僕の場合は
”目に見えない人々の営みの記憶”がテーマになります。
当時の人々の営みの様子が
おもちゃ箱のようによみがえってくる、
そんな建物や空間を探すのです。
これは江戸時代の呉服店の蔵。
いなせな江戸の人たちが
気取ってこのお店に出入りする様子が目に浮かんできます。
何とも言えない昔ながらの庶民の家。
交差点にあって多くの人がこの家の前を行き来したのでしょうね。
縁があって旅人がここで休んだり
子供たちが駆け回っていた夏が蘇ってきます。
これもなんだか僕のご先祖が活きていた時代からあった建物だろうか。
2階で人知れず恋文を書いている若い女性の姿なんかが
見え隠れしたりして・・・。
私の気持ちがあの人に届きますように・・・
飛行機がない時代でもこのような筋雲が
飛行機を飛ばしたかのように浮かんでいたかもしれません。
かと思うと
なんだかモボ・モガ時代のお洒落さんたちが
この時計の下を闊歩したのだろうな。
と思しきレンガの建物。
時計は止まっているけど
これはきっと夜の8時を差しているに違いない。
おっと!
時が止まった空間がここにもある。
人々の息吹が消えると
それに代わって生命力を伸ばしてくる蔦。
ここから人が消えた理由はわからないけれど
ここに間違いなく人々の営みの記憶があることを
この蔦が教えてくれる。
一通り街を歩き
お腹が空いたので「蔵」というカフェに入り
お昼にしました。
明治時代に建てられたレンガ造りの建物は
国登録有形文化財に指定されており
そこで食べるのは
なんといってもカレーでしょ!
中型のサラダボウルのようなお皿に入って出てきたカレーは
若い人には物足りないと思いますが
僕のような中年にはちょうどいい。
合わせて飲み物を頼むと100円引きになるというので
アイスコーヒーではなくオレンジジュースを注文しました。
先客の方は地元の人とお見受けしましたが
服装は違えど
やはりちょっと小粋なミス、ミセスが
当時もきっとこの街をリードしていたんでしょうね。。。
江戸時代に人切りがあったとか
明治時代に暴行事件があったとか・・・。
当時の様子に想いを馳せようとすると
本当はそんな悪い出来事もたくさんあったのだと思いますが、
そういう映像が浮かんでこないのが
この建築採集の旅のいいところです。
そういうネガティブなことを思い起こさせないひと時が
自分をおだやかにしてくれます。
東京と八ヶ岳の二地域居住も
なんとなく落ち着いてきました。
庭いじりもいいですが
観光ガイドブックにのらないような街の
見えない人々の営みの記憶を探して
こんな建築採集に出かけるのを
老後の趣味にするのもいいものです。