週末は雑木林に囲まれて

八ケ岳に魅せられて、週末は八ヶ岳南麓で暮らしています。東京と行ったり来たりの暮らしの中で感じたことや考えたことを綴ります。

長崎の旅ーおでんで変態する@「はくしか」(長崎市)

長崎の旅、3番目の変態は

「おでん」になります。

 

重ね重ね申し上げますが

ここで変態とは

全裸になって熱いおでんの出汁をかけて

もだえるようなことではありません。

”自分の殻を破る”という

とてもまじめな意味ですので。

 

僕は一人旅が一番性に合っているのですが

旅行先で積極的に友達を作るようなタイプではないので

基本見たこと・聞いたこと・体験したことは

すべて自己消化し

いいも悪いも自己完結させてしまいます。

いわば外側で起きていることを

内側に写生し

自分なりの味付けをして楽しむということだと思いますが

それは決して外側の世界に影響を与えることにはなりません。

得てして旅なんて内面と向き合うことに重きを置かれるので

それで十分だと思いますし

そう思って来たのですが、

今回はちょっと心を外側に開いた行動が

周りの空気を変えたという

新鮮な体験をしてきたので

ご紹介します。

 

長崎市内にある「はくしか」という

おでん屋さんに入ってみました。

www.hakushika.net

 

ここはですね、

創業60年にもなる老舗中の老舗で

知る人ぞ知る、なのか

知らない人はいない、のか

そのどちらともいえる有名店です。

 

別段おでんなど好まない僕が

この老舗の暖簾をくぐるのは

とても勇気がいりました💦

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ガラガラガラ・・・引き戸を開けると

カウンターもテーブルも8割がた満席のようで

こりゃやめようか・・・と思って後ずさりしたら

こちらどうぞ!といって

カウンターに座っていた先客さんが

荷物をどけて席を作ってくれました。

 

すみません・・・汗

 

座ってカウンターを一通り見渡すと

奥に中年の男性一人、

その隣で若いカップル、

その隣に中年の男性二人、

その隣に中年のカップル、

そうして僕を挟んで

左隣には仕事の同僚らしき

サラリーマン男性二人が

それぞれ思い思いにおでんをつついていました。

 

お店は女将さんとそのお手伝いさんの女性

二人で切り盛りしていました。

 

まもなくお手伝いさんがやってきて

僕の注文を取りました。

 

僕は数種類の定番の具材と

日本酒を注文しました。

 

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平戸あご、枕崎産カツオ節、青森県産貝柱、利尻昆布などの

南から北まで縦断する素材から抽出されただし汁は

にごりなく透明で

その中にゴロゴロと大き目の具材が浮かんでいます。

からしをすこしつけて

まずは大根を口にすると

トロトロまで煮込まれていない

絶妙の歯ごたえを残した大根から

ジュワ~っと旨味エキスな口いっぱい広がります。

 

なんという上品さ!

なんという清楚さ!

なんという洗練さ!

 

濃い目の出汁のおでんしか知らなかった僕は

思わず、おいしい!!

 

するとお手伝いさんがメガネを下にずらして

ニンマリしながらやってきて、

具材の事、作り方の事、お店の歴史など

わざと先生のように語り始めました。

 

するとそれを聞いていたお隣の中年カップルの2人組が

「是非アサリと春菊を食べてみてください。

もっと目から鱗ですよ~」

と教えてくれました。

 

注文しない手はありません。

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間もなくやってきたアサリと春菊ですが

これはこだわりの有名割烹などで

背筋を伸ばして食べるよりも

ずっとおいしいです!

何も足さない、何も引かない・・・

そういううまさではなく

具材のうまさを引き出す何かを足すだけ、

という加減の居心地の良さ。

 

「うまい!!」と僕。

「でしょ!!」とニヤリのご夫婦。

「良く来られるんですか?」と僕。

「いや、まだ3回目ですけど、

今月兵庫から3回来てます!」とご夫婦。

「ええ?!今月で長崎3回目ですか?」と僕。

「このお店のおでんを食べたくなってね」とご夫婦。

さあ、それから僕とご夫婦は盛り上がりです。

仕事の事、子供たちの事、

震災の事(彼らは阪神淡路大震災の経験者でした)、

老後の過ごし方の事・・・などなど。

 

ふとトイレに行こうと席を立ったら

急にお店の賑わいが耳に飛び込んできて

びっくり。

見渡すと僕らだけでなく

あちこちで知らない人同士が

わははわははと

盛り上げっているではありませんか。

 

気難しそうなおひとり様男性も

二人の世界に入っていた若いカップルの

上司の愚痴を言い合っていたサラリーマンも

自分たちの世界の垣根を超えて

カウンター越しに会話を弾ませていました。

(でもコロナ禍ということもあって

どこかで皆さん制御されている感じが

またさらに良かった!)

 

本来なら黙々と一人食し、飲んで、

自分の内側で旅のすべてを咀嚼していただろう僕ですが、

僕が一歩踏み出したことで変わった世界を見た旅というのは

なかったかもしれません。

 

「はくしか」のおでんがそうさせたのか

異国情緒に満ちた長崎の空気がそうさせたのかわかりませんが、

明らかに僕は”変態した”と思いました。

 

お店を出ると歌にあるように雨が降っていましたが

長崎は大の大人が変態するのにちょうどいい街です。

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