昨日は
八ケ岳でも評判が高い
おそば屋さん、
「いち」に行って来ました。
初めての「いち」です。
googleマップで検索しながら、
それでも間違えるほど
点在する農家集落の中にあります。
広い庭（原っぱ）の駐車場にクルマを止めて
お店に向かいます。
お店はずいぶんと時代を感じる農家です。
立て看板があったので
この建物が入り口なのかと思ったら、
この建物をぐるっと回ったその先に
大きな母屋らしき建物があり、
そこがお店でした。
こんな時代劇に出てくるような細道を回ると・・・
お店の入り口でした。
こうして写真で見ると
古民家を現代風に手を加えた
今どきの若者のこころくすぐるような
レトロモダンな感じですが、
実物を見ると
それ以上になにかこう得も言われない
不思議な重厚感、というか、
なんだか昔の人の息遣いが聞こえてくるような
そのぐらいの”気”を放っています。
ふと上を見上げたら
びっくり！
そこには右から左に、
「明治病院」と書かれた看板が
掲げてありました。
そう、ここはかつて病院だったのです。
どうやら明治25年に建てられたそうです。
西洋建築と日本建築の融合する、
山梨県令・藤村紫朗が奨励した
「藤村式建築」というらしく、
重要歴史記念物とかに
指定されているわけではないようですが、
それに匹敵するぐらいの歴史を感じます。
食べる前から圧倒されてお店に入ると、
今度はこの店での”禁止事項”の張り紙やプレートに
圧倒されました。
こういうのや、
こういうのが、
いたるところに掲げられています。
要するに「スマホ禁止」なんです。
ただし、写真はＯＫ。
スマホでメール見ながらとか、
ゲームしながら、といった
だらしない態度がダメなんでしょうね。
食べ物にはキチンと向き合って食べなさい、と。
とにかくあちこちに「スマホ禁止」があります。
（とはいえ写真ＯＫというのが
なんとも現実的ですね・・・）
本などが置いてある待合室で
待つこと１０分。
僕が好きなジャンルの本とか雑誌がいっぱいあって
この待合室、楽しい！
すぐにテーブルに案内されましたが、
もうちょっとここでのんびりしたい・・・
と思いました。
いよいよダイニングに入ると
そこには電球の傘やはかり、
テレビやミシンなど、
昔の暮らしの道具が
所狭しと飾ってあります。
おお～！何とも懐かしい！
昭和世代のおじさんは
思わずノスタルジーに浸ってしまいました。
下手な博物館や民芸館なんかより
よっぽど楽しい～。
・・・と、何をしにきたかわからなくなるぐらい
お店の空間に気を取られていたのですが、
しばらくして運ばれてきた
おそばのつけつゆに目を見張りました。
僕は「揚げ野菜のとろろそば」（1800円）を
注文してのですが、
そのつけつゆがこれです。
泡だったクリーミーなとろろから顔をのぞかせているのが
揚げ野菜です。
とうもろこし（生）、ジャガイモ、さつまいも、
茄子、かぼちゃ、にんじん・・・。
おそばがくるまでつまんでいてください、
と言われましたが、
この野菜だけでお腹がはってきます。
何よりも甘みのある素揚げの野菜に
体が喜んでいるのがわかります！
半分くらい野菜を食べたところで
おそばが来ました。
麺の太さが多少不ぞろいの感じが
手打ちらしさを感じます。
比較的茶色い麺ですが、
歯ごたえも味も
申し分なく上品です。
量は少なめですが、
何せつけつゆに入った揚げ野菜が多いので、
お腹が満たされないことはないでしょう。
僕たちは3人で入ったのですが、
僕たちの後にも続々とお客さんがやってきました。
「スマホ禁止」の張り紙が効いているのでしょう。
店の中はとても静かで
みんなひそひそ声で話し合いながら
そばと黙々と向き合っていました。
あ、でも、
店主の方はよくラーメンやさんなんかにいる
頑固一徹おやじで、
食べるマナーまでうるさい、
といった怖い感じの方じゃないですよ。
まじめで几帳面で
物静かな感じの方（ご夫婦？）です。
「スマホ禁止」も
ここがかつての病院だったので、
この場所の人々の営みの記憶が
そうさせているのかもしれません。
かつての病院が生まれ変わっておそば屋さんに。
こういう例はなかなかないと思いますが、
だからこその空間、
だからこその味を醸し出してくれています。
帰りはなんだか健康になった気分・・・。
他には間違いなくないだろう
個性満点のとても面白いおそば屋さんです。
