週末は雑木林に囲まれて

八ケ岳に魅せられて、週末は八ヶ岳南麓で暮らしています。東京と行ったり来たりの暮らしの中で感じたことや考えたことを綴ります。

あまりにも奇跡の邂逅だった。

昨日八ヶ岳の帰り道、

大月を過ぎたあたりの

国道20号線沿いのコンビニで

信じられない奇跡ともいえる出来事がありました。

 

僕の今乗っているルノールーテシアから3台遡って

ちょうど1996年(平成8年)から

2013年(平成25年)までの17年間乗っていた

三菱チャレンジャーに出会ってしまったのです。

 

同じ車種とかではありません。

その当時乗っていたクルマそのものだったのです。

なぜそれがわかるのかというと、

赤のツートンカラーのボディや

生成り色のシートが同じだったのみならず、

フロントバンパーのかすり傷や

僕が付け替えたホイールが

そのままだったからです。

 

 

あまりの奇跡の邂逅に

しばし見とれてしまったのですが

いろんなことが走馬灯のように浮かんできました。

 

このクルマは

長女が4歳、長男が2歳の時に新車で買いました。

子供たちと一緒の時間を自然の中で過ごしたいと

キャンプ道具を積んで海や山へと行けるクルマ、

ということで選びました。

 

買ってしばらくして

義理の母が白血病になりました。

その母をこれに乗せて何度も病院に通いました。

陽気な儀母は

乗るたびに

「背が高くてとってもいいクルマよね~」

と言いながら、

よっこらしょ、よっこらしょ、と大変そうに乗り込んで、

それが全く嫌味にならなくて

僕は心で笑いながら迎え入れました。

1年後に母は亡くなりました。

 

やがて長男が小学生になり

友達がたくさんできました。

その友達を後部座席に3人乗せて

みんなで楽しい話で大笑いしながら走っている時、

轍ではねた勢いでクルマの天井に頭をぶつけて

一人の子が泣き始めました。

でも話していた話があまりに面白くて

だれも彼の痛さなんか気にせずにいたら、

痛いよ~と泣きながら話に混じって

笑っている彼の顔があまりに面白すぎて、

笑いが止まらなくなったことがあります。

 

それからまたしばらくして

長女が中学校に上がりました。

新しい友達がたくさんできて

そのうちの2人の女の子を乗せて

朝学校に送り届ける道中

目の前に同級生の男の子が歩いていました。

「あ、●●君だ!」

と娘が言うので

「せっかくだから乗せてってやろうか?」

と僕が言うと、乗っていた娘の友達の一人が

「いえ、結構です。せっかくなので轢いちゃってください」

というので、

「ようし!じゃあ轢くぞ!」と冗談いって

加速をしたら、

みんながキャーキャー言って大騒ぎし、

ジェットコースターに乗っているような気分に

なったこともあります。

 

音楽はカセットデッキでした。

ふやけてフニャフニャになったテープから流れる

中島美嘉の「雪の華」を聴きながら

疲れて眠る子供たちを乗せて

スキーから帰る途中に、

やっぱり会社を辞めよう!

と決心したことを覚えています。

 

僕にとってこのクルマは

喜びも悲しみも辛さも含め

人生を一番がむしゃらに駆け抜けたときの相棒でした。

およそ14万7千キロ走りました。

だから売るときに業者の方から、

「これだけ古くて走っていると普通買取は難しいですが、

三菱のクルマは東南アジアで人気なので

8万円で買取しましょう」と言われ、

ああ、まだ活躍の場があるんだ・・・

と思うと、ほっとした気分になりました。

 

それから9年経った昨日、

そのクルマに出会ってしまったのです。

東南アジアになんか行っていなかったのです!

ここ日本で現役で活躍していることに

軽いショックとともに涙がこぼれました。

(ほんと涙腺が弱いのです・・・)

涙で曇った目をこすりながら

写真を撮っていたら、

オーナーらしき人が現れました。

僕と同じ年代のスラリとした男性でした。

アウトドア志向なのでしょうか、

ファッションも親近感を覚えました。

親近感ついでに声をかけようかとも思いました。

でもすんでのところで辞めました。

新しいオーナーのもとで

歳に負けないよう頑張っているチャレンジャーに

「僕が最初のお父さんだよ。おぼえてる?」

と言っているような気がして、

それがとても失礼のような気がしたからです。

 

そんな僕の心の中を知ってか知らずか、

チャレンジャーのエンジンに火が入り、

ゴロゴロと低い音を立てて動き始めました。

その音は紛れもなく

子供たちを笑わせて眠らせたあのときの音でした。

 

その後を追うように買ったばかりのルノーの乗り込み

エンジンをかけたら、

ボボボボボーといううなり声が

怒っているかのように聞こえました。