週末は雑木林に囲まれて

八ケ岳に魅せられて、週末は八ヶ岳南麓で暮らしています。東京と行ったり来たりの暮らしの中で感じたことや考えたことを綴ります。

ひとり鉄鍋 ~パエリア~

朝起きると

南面の庭には朝陽が降り注いでいた。

まぶしい光に誘われるようにテラスに出ると

空気は凍っている。

テラスの目の前にはロウバイの木があって

近づくとたくさんの黄色いつぼみのうち

4つほどがつぼみを開こうとしていた。

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すかさず足元に目を落とし

たまった枯れ葉を除けていたら

そこから一輪の黄色い福寿草が

同じように花を咲かせようとしていた。

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我が家の山小屋に春を告げるのは、

去年もロウバイと福寿草だった。

枯れた茶色の冬のキャンバスに最初に

最初に自然が落とす色は

黄色。

この黄色が僕は大好きです。

 

昼間はひたすら仕事に取り掛かる。

晴れた空は午後に入ると曇り出し、

買い出しに出かけると

八ケ岳も南アルプスも

頂上付近は紗がかかったように曇り空に消えていた。

 

今日の夕飯はどうしようか、

と考えた結果、

食卓も黄色になったら楽しいかもしれないと思い、

余っていたサフランを使い

パエリアを作ることにした。

 

もちろん作るのは僕ではない。

薪ストーブと10 1/4インチのキャストアイアンスキレットが

いつものようにシェフをする。

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僕はただ見守る番人にすぎない。

 

ニンニクと玉ねぎと米を炒め

そこにサフランで色を付けた水を加え

有頭海老とあさり、ビーマン、パプリカ、

インゲン、ミニトマトなどを載せて

少しのコンソメで味を整えて煮込むだけなのだが、

水の量と火加減と時間の掛け算が難しく

米が固いままだったり

逆にべちゃべちゃになりすぎたりと

いつもうまくいかない。

 

今日はというとこれまでの失敗を整理し、

水を多めに(米2合に対して水400cc+α)し、

最初に蓋をして15分ぐらい煮て

あさりが開いたあたりから蓋を取り

薪ストーブの中心から少しずらし

10分ぐらい水分を飛ばした。

 

いい感じで水分がなくなっているのを確かめ

薪ストーブから下して10分ほど蒸らすと

ほどよくリビングにうまそうな匂いが充満し始めた。

 

ちゃんと仕事してくれたじゃないか!

と、問いかけてくるスキレットの中は

彩に満ちていて

春満開。

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ご飯をなべ底からすくってみると

ちょうどいいアルデンテに炊きあがっていた。

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味も食感も、我ながら大成功!

 

お腹が満たされてウイスキーを口にしながら

今回の成功の秘訣をふと考えた。

水の量?そういわれればいつもより多めにした。

火加減?そういえば薪の量を調節した。

調理時間?確かにいつもより長めにした。

でも、別の日に全く同じ要領で作っても

こうはならない気がした。

きっといつも参考にしている

ネット上にアップされているレシピを見なかったからだ。

食材の種類や量、シェフたちのご機嫌を確かめながら、

すべて感に頼ったのがよかったのかもしれない。

 

まだまだ感は老いちゃいない。

 

次に来るときは

南面の庭は

黄色に混じって

緑色が冬のキャンバスに落ちているかもしれない。

 

そうなっているとうれしい。