週末は雑木林に囲まれて

八ケ岳に魅せられて、週末は八ヶ岳南麓で暮らしています。東京と行ったり来たりの暮らしの中で感じたことや考えたことを綴ります。

戦うステージにない店で癒された@「ラーメン蘇州」(八ヶ岳)

八ケ岳には

とてもおいしいパン屋さんとか、

イタリアンとかカフェとかカレー屋とか、

東京顔負けの飲食店が

たくさんあります。

 

東京の有名店で修業をし

八ケ岳でお店を開いている・・・

そんなシェフもたくさんいます。

 

シェフの個性やライフスタイルが

店内にもメニューにも現れていて

どこに行ってもブラボー!だと思います。

 

1年と少し八ヶ岳を行ったり来たりするように

なった僕にとって

そういうお店を行くたびに発見するのは

二地域居住の醍醐味でもあります。

 

が、

今週末、今年最後の八ヶ岳から帰る途中、

「食べログ」とか「ぐるなび」などでの情報探しに

少し疲れて、

どこか気楽に寄れるメシ屋ないかなあ・・・

などとぼんやり思っていたら、

なぜか、ふと道中、

須玉インターの近くにあるラーメン屋、

蘇州」の看板を思い出しました。

 

道路際にあって

昔ながらのくたびれた看板と

何をコンセプトにしているかわからない

時代遅れ感のある店構えに、

気にも留まることなく素通りしていたのですが、

なんとなくいつもクルマがそこそこ

止まっているので

地元の常連さんの店なんだろうな・・・

ぐらいに思っていました。

 

何も難しいこと考えず

そこに寄ってラーメン一杯だけひっかけて

帰路に着こう・・・。

 

午後1時半ぐらいでしたが、

広い駐車場にクルマが4~5台ほど

止まっていました。

 

あらためて見るお店の外観は

ごちゃごちゃしていて

おいしそう、

と思わせる雰囲気ではありません。

もろ、昔から地元にあって

別に全国的に名を馳せよう、

などという戦略は微塵も感じられません。

 

逆にそれが敷居を低くしてくれています。

 

店内に入ると

どでーっと広い空間に

それこそ田舎の実家の台所にあるような

イスとテーブルが

並んでいます。

 

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開いている席にどうぞ、と言われ、

僕は窓際のテーブルにつきました。

 

おすすめは何ですか?

と聞いたら、

肉味噌ラーメンとか人気があります、

と言われたので、

何も考えずにそれを注文。

 

間もなく肉味噌ラーメンがやってきました。

 

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味噌ラーメンの上に炒めたひき肉ともやしが、

その上に刻みネギが載っています。

 

スープは見るからに味噌色した

誰がどう見ても味噌ラーメンです。

 

スープをすくって一口・・・。

ちょっとピリっと辛く、

でもしっかりした味の味噌スープが

口いっぱいに広がります。

穴あきレンゲがあったので

それでひき肉をすくって食べました。

タンタンメンに載っているような

エッジの効いた味ではなく、

マーボー豆腐作りかけの途中の

ひき肉のようで、

でもそれが味噌スープと絡まると、

柔らかいうまさになってにじみ出ていました。

 

さて、麺はというと・・・

中太のちぢれ麺です。

 

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どこにでもあると言ってしまえばそうなんですが、

これもまたスープとの相性がピッタリでした。

 

 かつて六本木の「天鳳」を食べたときの迫力や

京都の「天下一品」を食べたときのショックや

博多の「一風堂」を食べたときの今っぽさや

勝浦タンタンメンを食べたときのユニークさなど、

何ひとつ訴えてくるものはありませんが、

地元の人に愛されるように

多分店長が長い時間をかけて

独自で工夫しただろう味が、

無性に体に染みわたりました。

 

見渡すとお客さんは

地元の人と見られる方ばかりです。

おじいさんとおばあさんの老夫婦、

小さな子供連れの若い家族、

仕事(たぶん農作業か?)を終えた

日焼けした顔の男性・・・。

静かにしゃべったり、

スポーツ紙を読んだり、

思い思いの時間を過ごしています。

 

店の中にはFMラジオが流れているのですが

受信環境が悪いのでしょう、

ザーザー言ってDJが何をしゃべっているのか

聞き取れませんでした。

 

ずっと昔からこの風景が

当たり前のようにここにはあったんだろうな・・・

 

僕は一人その風景に飛び込んだよそ者でしたが、

誰にジロジロみられるわけでもなく、

当たり前のように風景に馴染んでしまったような

妙な安心感があり、

何の気兼ねなくラーメンをすすりました。

 

 

仕事柄、僕の周りには

マーケティングとかブランディングとか

コンセプトとかストラテージプランニングとか、

そういう言葉が常に飛び交っています。

 

”戦略のないところに成功なし”

そういう前提の中で

僕はお金をいただいています。

 

ですので、レストランに行くにも

ショッピングするにも、

ここにはどんな戦略があるか、

そんな目でみてしまうクセがあります。

 

でも最近、ときどき、というかしょっちゅう、

そういう自分に疲れ、

別な居場所を探してしまいます。

 

何も狙わず、考えず、分析せず、

人知れず平温で平均脈拍の

抑揚のない普通の自分に

メシを供給してやりたい、

と思うときがあります。

 

そう言えば3か月ほど前に

「釜めし まこと」という

地元の釜めし屋で

ほっこりしたことを思い出しました。

 

www.kogysma.com

 

八ケ岳は感度の高い人がたくさん訪れ、

そういう人に向けたおしゃれでおいしいお店も

たくさんあります。

しかし、それに隠れて

ひっそりと地元の人に親しまれている

年期の入ったお店も結構あります。

 

こういうお店は

「食べログ」などでは決して点数は高くないし、

出てこないこともあります。

(ちなみに「蘇州」は食べログで3.08です)

でも、癒される体験って、

本当は戦うステージにいないような場所にこそ

あるのかもしれない。

 

そう思うと、

来年2年目に入る八ヶ岳二地域居住生活、

こういう地元の人しか知らないような店を

敢えて発見していく、

という楽しみが見えてきました。